こんにちは
はにー(@honey_come0011)です。
以前紹介した、「ペリオドンタルメディシン(歯周医学)」
これは、「歯周病との関係する全身疾患についての学問」です。
近年、歯周病によって悪化したり、惹起するといわれている全身疾患が多数報告されています。
特に、歯周病と糖尿病の相互関係は、近年の研究報告もあってTVや雑誌などでも多数取り上げられるようになりました。
また、心臓弁膜症やカテーテル手術を行う予定、またはすでに行った患者さんは、歯周病を放置することで循環器系に歯周病が影響し予後不良となる可能性も高いです。
今回紹介するのは、「歯周病が影響する早産・低出生体重児出産」についてです。
【早産】とは、在胎週数22~36週で出産することをいいます。
原因としては、
妊娠高血圧症や前置胎盤などの妊娠中の異常
腎疾患や心疾患、母体年齢などの内科・婦人科的な合併症
喫煙、ストレス、労働などの社会的な要因
など多岐にわたります。
また【低出生体重児】とは、出生時体重が2500g未満の新生児のことを指します。
こちらも原因としては、
① 在胎週数が短く出生してしまい出生時体重が小さくなる場合
② 子宮内での体重増加が悪かった場合(胎児発育遅延)
の2つが存在します。
実は近年低出生体重児が、徐々に増加しているという報告があります。最近の40年だけでも平均の出生体重が200gも減少しています。低出生体重児の割合も、全体の約10%ほど増加しています。近年、この傾向には歯止めがかかっているようですが、平成25年には、男性で8.5%、10.7%まで増加しています。
大きな要因としては母体のやせ型思考と喫煙歴などが関係していると言われています。
私も最近知ったのですが、妊娠中の体重増加をここまで警告、指導しているのは日本くらいだそうです。妊娠高血圧症などを警戒してのことなのでしょうが、すこしやりすぎじゃないの?というのが最近指摘されているそうです。
※ちなみに、出生時体重が2000g未満または生活能力が薄弱の低出生時のことを未熟児と呼んでいましたが、こちらは正式な医学用語ではありません。
「早産児」「低出生体重児」と比較して、呼吸機能や筋機能など胎外での生活に適応できるか否かなどの、事項も考慮して用いられます。どちらかというと、社会福祉・保健制度で用いられる用語かなーと思います。
さて、話を歯周病との関係に戻しましょう。
《歯周炎 ⇒ 低出生体重児》
重度歯周炎と診断された妊婦が低出生体重児出産をする確率は、健康な歯肉の母親と比較して約7倍との研究結果があります。
これは、飲酒や喫煙をしている場合よりもはるかに高い割合となります。
メカニズムとして考えられているのは、やはり①歯周病原菌が全身にながれて生じる可能性です。炎症を起こした歯肉から血管中へ、さらに羊水内へ入り込み胎児の成長に影響を及ぼすというものです。
《歯周炎 ⇒ 早産》
歯周病原菌が増加すると、歯肉での炎症が進行します。
炎症自体は、免疫が身体を守ろうとしている証拠でもあるので一概に悪いものとは言えません。しかし、このとき「炎症性サイトカイン(IL-1 、IL-6 、TNF-αなど)」という物質が多量に放出され、他の免疫細胞を呼び集めようと号令をかけます。歯肉では、免疫大集合の号令として働きますが、これが血流にのって全身に回るとすこし厄介なことになります。
特に妊婦の胎内では血中のサイトカイン濃度の増加は出産のゴールサインとみなされます。濃度が高まると妊婦の子宮収縮が始まり、発育不十分な状態で赤ちゃんが産む早産・低出生体重児出産につながる可能性があるのです。
また一方で、妊娠中はつわりなどもあり、不規則な食習慣、歯ブラシ習慣の変化(悪化)になったりします。さらに、妊娠中に増加する女性ホルモンが歯周病原菌の増加につながります。そういった理由で、いっそう歯肉炎・歯周炎が進行しやすくなります。(妊娠性歯肉炎)
ブライダルチェックとまでは言わないですが、歯周病の定期的なチェック、歯石除去などを習慣化させておくことが、重要だと思います。
結局、定期的な歯科メンテナンスが重要なんですね!
《まとめ》
1. 重度歯周病の妊婦は、約7倍早産・低体重児出産が発生しやすい
2. 歯肉から、歯周病原菌・サイトカインが血流に入り、子宮・羊水に影響する
3. 妊娠中は、女性ホルモンや生活習慣の変化もあって、歯肉炎が生じやすい
4. 定期的な歯科メンテナンスがやっぱり大事!