はにかむブログ

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歯周病と誤嚥性肺炎の関係

こんにちは

はにー(@honey_come0011)です。

 

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以前紹介した、「ペリオドンタルメディシン(歯周医学)」

これは、「歯周病との関係する全身疾患についての学問」です。

近年、歯周病によって悪化したり、惹起するといわれている全身疾患が多数報告されています。

 

特に、歯周病と糖尿病の相互関係は、近年の研究報告もあってTVや雑誌などでも多数取り上げられるようになりました。

 

 

また、心臓弁膜症やカテーテル手術を行う予定、またはすでに行った患者さんは、歯周病を放置することで循環器系に歯周病が影響し予後不良となる可能性も高いです。

 

さらに重度歯周炎を診断されている妊婦は、早産や低体重児出産になりやすいとの報告も多数発表されています。

 

今日は、歯周炎と誤嚥性肺炎に関するお話です。

 

「誤嚥(ごえん)」という言葉をご存じですか?

私たちは、モノを飲み込むと通常それらは食道を通って胃に向かいます。

しかし、それらが食道を通らずに気管に入り込んで肺に向かってしまうことを「誤嚥」と呼びます。

 

高齢になるにつれ、嚥下反射や咳反射の低下、呼吸の不安定、口周囲の筋力低下、舌の筋力低下、姿勢の悪さなど様々な問題が出てきます。それと同時に、正常な嚥下(えんげ)がしにくくなり、誤嚥が起こりやすくなります。

また安静時や寝ている唾液や胃液が少しずつ肺へ流れ込んでしまう、「不顕性誤嚥」も起こりやすくなります。

 

本来であれば、誤って気管に入った場合、ゴホゴホとむせます。

むせるという現象はもともと防御反応なのです。しかし、高齢になると気管のほうへ流れてもうまくむせる反射ができないことが多いのです。またそもそも気管内に異物が入ったことに気づかないということもあります。

 

この誤嚥性肺炎を起こす細菌には様々な種類が存在します。

その中でも、歯周病原菌の割合は大きいことがわかっています。

つまり慢性的に歯周病の炎症を放置していると、知らない間に気管や肺へ流れ込んでいる可能性も高いのです。

 

現在、成人の死亡原因は、がん・心臓病・脳血管疾患などの生活習慣病が非常に増加していますが、そのなかでも肺炎は増加傾向です。

特に65歳以上から急に増加しはじめ、90歳以上の男性だけでいえば、死亡原因の1位ともいわれています。

 

私も以前、高齢者の施設訪問、口腔健診を行っていたのですが、小さな入れ歯であれば簡単にのどに詰まらせたり、それに気づいていない高齢者も数回見かけました。本来あり得ないことなのですが、高齢者では、こんなに大きなものでものどに引っかかっても気づかなかったり、その苦しさを人に伝えることができなかったりします。

ちょっとした変化に気づいてあげることが、介護スタッフや家族には求められそうです。

 

ブラッシングや定期的なメンテナンスは虫歯予防・歯周病予防だけでなく、今後の日本の長寿社会を支える、鍵となりそうです。

 

【まとめ】

1.高齢者は「飲み込み」や「むせる」力が弱く誤嚥しやすい。

2.歯周病菌が、気管に入り込み肺炎につながりやすい。

3.65歳以上から肺炎の死亡率が急増する。

4.歯磨きや歯医者での定期健診が予防として重要である。