はにかむブログ

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肺炎の死亡率が激減!?死因統計の裏事情

こんにちは

はにー(@honey_come0011)です。

 

 久しぶりに統計を眼にすると、「体感と違う!」「昔勉強したのと違う!」など時々驚かされることがあります。

 

先日、私の勉強不足もあるのでしょうが「人口動態統計調査」を眺めていて、意外に思ったことがありました。みんなと共有したいので今日はブログでアウトプットしておきます。

 

では、みなさんに問題です!

現在(H30年「人口動態統計」)、日本人の死因順位はどれでしょうか?

次の1~5を死亡率が高い順に正しく並べてください。

1. 肺炎

2. 脳血管疾患

3. 老衰

4. 心疾患(高血圧症を除く)

5. 悪性新生物(腫瘍)

 

わかりますか?

今日は、死因統計のお話です。

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  1. 日本人の死因ランキング
  2. これまでの死因順位の推移
  3. なぜ肺炎が減少したのか?
  4. 最後に

日本人の死因ランキング

まずは、答え合わせから。

これが、平成30年最新の死因構成割合です。

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よって答えは、5⇨4⇨3⇨2⇨1でした。

私は、つい先日これを見て驚きでした。

僕が、学生時代習ってきたのは、「1位がん(悪性新生物)、2位心臓病、3位脳卒中」だったからです。平成生まれの人間なら、だいたい中高はこの並びで勉強したはずです。笑

そして10年ほど前から、「肺炎」が3位に上昇したところまでは記憶にありました。

しかし今や「老衰」が3位!?

驚きです。普通に考えて、高齢者だらけの日本で「肺炎」が5位まで後退するわけがない....と思い調べてみました。

これまでの死因順位の推移

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戦後、焼野原になった日本の衛生状態は最悪でした。

戦後しばらく(昭和25年ごろ)までは、日本人の死亡率の1位は結核でした。

たしかに、歴史ものの小説や映画を観てても、「結核に罹患し従軍できなかった」といったシーンが良く描かれます。

 

あれから約70年、高度経済成長とともに日本人の栄養状態、衛生意識は大きく向上、いまや医療技術も含めて先進国であることに間違いはないでしょう。

予防接種(BCGワクチン)や抗生剤の開発も功を奏し、結核など感染症での死亡率が大きく減少しました。

その反面、生活習慣用が新たな課題となりました。

超高齢化社会、働き方の多様化、欧米の食文化が流入なども大きな原因と言われています。

そこで私たちは、「1位がん(悪性新生物)、2位心臓病、3位脳卒中」と学校で習ってきた訳です。

 

2011年(平成23年)からは、「肺炎が」3位に上昇、「脳血管疾患」が4位に後退しました。

1960年代をピークに「脳卒中」が減少傾向を示す理由として、

  • 減塩の重要性が浸透したこと
  • 生鮮食料品摂取の増加
  • 肉体労働の軽減
  • 検診による高血圧の早期発見・早期治療
  • 公衆衛生活動の効果
  • 国民の健康意識の向上

などが考えられます。

 

「肺炎」も感染症です。そのため戦後しばらくは非常に高い死亡率を示していました。

抗生物質や医療保険制度の誕生により、肺炎の死亡率も大きく減少しました。しかし、1980年に入ると、日本は超高齢化社会へと突入、戦後に近いレベルまで肺炎死亡者がグイグイ上昇しています。(上記グラフの水色ライン)

 

右肩上がりの上昇を見せてきた「肺炎」死亡者数。
ここ数年で急に5位に落ちるとは考えられません。

なぜ肺炎が減少したのか?

 

これには、統計手法や世の中の流れが影響しています。

最も大きな理由が、集計方法の変更です。厚生労働省による人口動態統計により日本人の死因統計が報告されます。ただし、2017年(平成29年)から「肺炎」から「誤嚥性肺炎」(現在7位)を独立して集計するようになったのです。

したがって、2017年から「肺炎」が激減したのです。

 

「誤嚥性肺炎」も高齢者増加の流れとともに、現在急激に増加しています。

ちなみに「5位:肺炎」「7位:誤嚥性肺炎」を合算した場合、従来通り「心疾患」に次ぐ3位となります。

 

さらにもう一つ、死亡診断書を記載する医師の診断基準です。

以前は、「老衰と診断書に書くことを良しとしない慣例」「死亡の背景には必ず疾患があるという考え方」「そもそも老衰の定義があいまい」などもあり、死亡診断書に「老衰」と記載する医師は少なかったようです。

しかし、2008年(平成20年)頃から再び、死亡病名に「老衰」と記載することが増えてきました。特に現在、「日本人の死に場所」が病院から施設へと移りつつある。施設の個室化がすすみ第2の自宅という意識が高まったことに加え、家族が老衰死を歓迎していることも大きいです。老衰死=大往生のような、国民意識の変化も後押ししていると考えられます。

 

以上の背景が、不自然な死因統計の裏事象であると考えられます。

ひとまず一件落着です。笑

最後に

診断基準をころころ変えられては、死亡順位の意味もなさないのではないでしょうか。

ふとこの統計に不信感がよぎりました。

 

世界トップレベルで超高齢化が進む日本では、「老衰死」が30%ほどを占めていても全く不自然ではないと指摘する医師もいる。そうなれば、簡単に死因1位となります。

 

死因として老衰死が大半を占めるようになれば、日本人の死生観が大きく変わります。「老衰で死ぬのは当たり前」となれば、過剰な延命治療を抑えることもできるかもしれない。生命維持装置につないでおくだけで、病院収入となる不可解な医療体制も減少すると考えられる。延命治療が一概に悪いわけではないのだが........

 

延命治療依存を抜け出すためにも、医療界だけでなく国民意識の転換も必要になるでしょう。そのためにも、死亡統計をありのままに正確に報告することが重要であるといえるのではないでしょうか?

 

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