はにかむブログ

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歯科疾患の新常識「NCCL」とは?

こんにちは

はにー(@honey_come0011)です。

 

歯科で扱う二大疾患は、虫歯と歯周病です。

しかし、親知らずの問題、口内炎、顎関節症、ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)、舌の異常など様々な問題を抱えて患者さんは来院されます。

 

そして今回は、知らず知らずのうちに歯が欠けてくる症状、「NCCL」についてピックアップします。

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   【目次】

NCCLとは?

NCCLの原因は?

NCCLの症状は?

治療法とは?

最後に

 

 

NCCLとは?

非う蝕性歯頚部歯質欠損(Noncarious Cervical Lesion)の意味です。

要は、虫歯が無いにもかかわらず、歯が欠損してしまう問題です。

虫歯、歯周病に次いで、第3の歯科疾患とまで言われています。

百聞は一見に如かず。

まずは、どんな症状か見てもらいましょう。

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↑ 中央の上の歯に注目してください。歯の根元付近に、鋭角な凹みがみえますか?

これがNCCLです。

実は、下の歯にも皿状のなだらかなNCCLが認められます。

NCCLには、いくつかの形状で分類できます。

 

 

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↑ 奥歯の付け根が大きく欠損しているのがわかりますか?

進行するとここまで鋭角に欠損することもあります。

いずれ、知覚過敏として痛みを伴うこともありそうです。

 

こういった、歯の付け根に生じる欠損(凹み)をNCCLと呼ぶようになりました。

ここ5年ほどで急に普及し始めたWORDであるため、まだ知らない歯医者さんも結構多いです。むしろ、勉強中の歯科学生さんのほうが詳しいかもしれません。

 

ただし病態自体は、昔から存在します。

これまでは、「くさび状欠損」「WSD(Wedge Shaped Defect)」として保険用語としても収載されているメジャーな用語として呼ばれていました。

現在も、日本の大多数の歯科医師が、WSDと呼んで共有している歯科疾患です。

ではなぜ、ここにきて呼び方を変えていこうとしているのでしょうか?

そこには、歯科界が長らく迷い込んでいた偏見と先入観が見え隠れするのです。

 

NCCLの原因は?

NCCLの原因は多因子性です。

つまり様々な要因が重なって、形成されると考えられます。

その中でも有力なのが、

・ 歯磨剤に含まれる研磨粒子

・ 強すぎるブラッシング圧

・ 歯ぎしり・くいしばりによる力のリスク

・ 酸蝕症

などが挙げられます。

 

これまでのWSD(くさび状欠損)という考え方は、大部分が力によるリスクによるものと片付けられており、見つけたらすぐに欠損部分をコンポジットレジン修復(虫歯を詰めるのと同じ治療法)で対応していました。

しかし、コンポジットレジンといえど人工物です。その修復物の横からすぐに虫歯になることも多く、元も子もない処置これまでの歯科界はたくさんしてきました。

 

しかし、最近の研究でこの歯頚部の欠損は、多くがブラッシングによるものではないか?という意見が欧米を中心に拡大しており、日本にも広がってきています。

 

さらに

・歯ブラシを使用しない動物の歯にはWSDは存在しないこと

・これまで教科書で当然のように教えられてきた、力の応力とWSD発生のモデルに根拠がないこと

・歯ぎしり・食いしばり症状がなくても、NCCLが認められること

・歯磨剤を用いた天然歯の実験で、鋭角の欠損が作成できたこと

などから、徐々に「歯ぎしりリスク ⇒ WSD」という常識(偏見)を修正しようという動きが出てきました。

 

 

ここで「NCCL」という用語が普及してきました。

要は、今まで歯医医師が考えてきてたよりも、ブラッシング圧や研磨剤が歯質に与える影響は大きいのだよ。ということです。

 

NCCLの症状は?

NCCLが進行するとどういった症状が出てくるのでしょうか。

こんなに凹んでいると磨きづらくて虫歯ができそうに思われるかもしれませんが、実はNCCL内に虫歯はめったに見られません。やはり、歯ブラシが必要以上に接触しているからこそだと思われます。

 

歯の神経が元気な歯であれば、徐々に冷水痛が出てくることも多いです。

いわゆる知覚過敏です。

NCCLが非常に大きく拡大するといずれ、歯が割れる(破折)することもあり、最悪の場合、抜歯となります。

 

治療法とは?

NCCLの進行スピードや症状は、個人差が大きいです。

大きく歯が欠損していても平気な人もいれば、たいして欠損が見られないのに知覚過敏が強く食事もままならない人もいます。

 

生活に支障がないのならまずは何もせずに経過観察が一番良いと思います。

なによりも、進行を抑えるために歯ブラシ圧について注意・指導します。

場合によっては、研磨剤の含まれない歯磨剤に変更してもらいます。

不用意に人工物で充填すると、すぐそばから虫歯になりやすくなるので、いきなり修復はしないことが多いです。

 

ただし症状がなくても、歯の欠損があまりにも大きいのであればそれ以上の進行や破折を考慮して、コンポジットレジンによる充填を行います。

 

NCCLへの治療は、あくまで対処療法です。

根本的な解決は、ブラッシング習慣を注意すること、歯ぎしり・食いしばりといった力のリスクをフォローすることが重要になってきます。

 

「硬い」毛先のブラシを使用している人は。「ふつう」か「やわらかめ」に変更しましょう。歯ブラシの柄はグーで握らず、ペンを持つように!ゴシゴシ音を立てず、1本ずつ細かく動かすこと。

こういった習慣の変更でも十分予防できます。

 

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最後に

ただし、この毎日の習慣を患者さんに変えてもらうことほど難しいことはありません。特に、歯ブラシのやり方は子供のころからの習慣として身体にしみこんでいます。これを改善させようと指導・啓蒙してもなかなか変わらないのも事実です。 患者さんに寄り添い、一緒にブラッシング改善していく根気強さ、親身な対応が求められると思われる。

 

 

 

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