はにかむブログ

歯医者がみんなの疑問にふんわり答えたり、写真撮ったり、雑記したりのブログ

力のリスクから歯を守るには?

こんにちは

はにー(@honey_come0011)です。

 

前回、噛む力(=咬合力)がいかに歯の崩壊につながっていくのか、咬合力が虫歯や歯周病の進行に影響するかをお話ししました。

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今回は、そんは破壊的な咬合力、つまり「日中の食いしばり」や「夜間の歯ぎしり」からいかにして歯列を守るのか、についてお話していきます。

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    目次

・咬合性外傷の症状

・歯科医院での対応

・自分でできる予防法

・治療用マウスピース

・最後に

 

咬合性外傷の症状

歯ぎしりや食いしばり等の過剰な力によって、歯が一時的に炎症を起こすことを「咬合性外傷」と言います。歯の根元に強い力が加わり、捻挫していると考えていいでしょう。よって、安静にしておけば自然と治ることも多いです。

 

症状としては、歯の痛み、冷たいものがしみる、歯が揺れる、顎の関節の痛みなど個人差も大きいです。痛みに鈍感なタイプの人なら、知らず知らずのうちに歯が削れてしまう(咬耗)が生じることも多いです。

 

「安静にして」というのは簡単ですが、生きていくうえで1日3食摂る必要がある我々は、歯を1日休めることは容易ではありません。

 

また「歯が痛い」と一言でいっても、虫歯による痛み、知覚過敏による痛みなど様々です。まずは、歯医者さんに相談しましょう!

 

歯科医院での対応

さて、歯の痛みが虫歯/歯周病などでなく、過剰な咬合力によるものと分かったら歯医者さんはどんな治療をするでしょうか。

 

➀まずは経過観察です。つまり「何もせずにしばらく様子をみましょう」ということです。少し意外に思われるかもしれませんが、咬合性外傷による疼痛は一時的なことが多いです。1~2週間もしたら軽快することも多く、いきなり削ったりするのは時期尚早と考えられることも多いです。何もせず治っていくなら、そんなに楽なことはないですよね?ただし患者さんによっては、せっかく来たのに何もしてもらえないの??と不機嫌になる方もいます。「いつもすぐに歯を削る歯科医がいいドクターとは限らない」ということを覚えておきましょう。

 

②さて、それでも痛みが変わらない、生活に支障が出るレベルで痛い、物が噛めないほど痛いとなれば、次の手を打つ必要があります。

それが「咬合調整」です。

要するに、強く当たっているであろう歯の頭を削ります。それによって、痛みの出ている歯への負担を減らしてあげることができます。これで多く、削る量もわずかで済むことも多いため、有効な治療法です。

 

デメリットとしては、歯を削った分、他の歯に強く負担がいく可能性があることです。その際は、隣の歯にまた外傷がでることも多く、歯ぎしり・食いしばりなどの根本的な原因除去を行う必要があります。

 

③歯並びの悪さによって正常なかみ合わせが確立できていないことも多いです。本来は、カチッと噛めば全28本すべてに満遍なく接触しているのが理想です。(実際そんな理想形はなかなか存在しないのですが....)

しかし、奥歯のみで噛んでおり、前歯では物を噛み切れないタイプの人、歯並びがガタガタで噛み合わせに参加できている本数が少ない人は、より少ない本数で噛まないといけません。その分、咬合性外傷の症状が出やすいとも考えられます。

 

こうなってくると、根本的な治療法はみなさんご存じ「矯正治療」になります。

10~30代が限界ではないでしょうか。ある程度の年齢を超えて矯正治療に踏み切れる方は少ないと思います。費用的な面でもハードルが少し高めです。

 

自分でできる予防法

では、最も簡単な咬合性外傷の改善・予防方法は何でしょうか?

それは、「行動変容療法」です。

つまり、仕事や運動時など無意識に噛みしめている時間帯が、患者さんには多く存在します。起きている間は、噛みしめにブレーキをかけることができるはずです。よって、「普段から上下の歯をくっつけないよう意識して生活する」ということです。

酷い場合は、スマホの待ち受け画面に「噛まない!!」と表示させたり、テレビやパソコン画面に付箋で「歯をくっつけない!!」と貼り付けたりして視覚的にも警告させます。

毎日の意識から、習慣を変容させて噛み合わせによる外傷を防ぐことができます。まじめで素直な患者さんほど効果が出やすいです。

 

治療用マウスピース

行動変容療法ができるのは、当然起きている間だけです。

就寝中は、一切ブレーキをかけることもできる「ガリガリ」「ギシギシ」と歯ぎしりをしがちです。家族やパートナーに指摘されたことも多いのではないでしょうか?

そこで用いるのが「治療用マウスピース」「治療用スプリント」「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースです。

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おおよそこんな形態で、上あごの歯にはめて使用することが多いです。

寝ている間のみ使用し、装着しているあいだは、絶対に歯と歯は接触しません。

万が一、歯ぎしりのような運動をしても歯が削れることはなく、マウスピースのプラスチックが削れてくれるため、歯を守ることができます。

また、前後左右なるべくすべての歯に均等に負担がかかるように設計できるため、一本の歯に過度な力が加わることを防ぐことができます。

 

私も咬合性外傷で苦しんでいる患者さんにはよく作製します。

一度歯の型取りしたら、次回の来院時にはもうお渡しできるのもメリットです。

保険も適応しており、2000~5000円ほどで作製できます。

もちろん、マウスピース作製をしていない医院もあるため、まずは担当医と相談しましょう。

柔らかい(ソフトタイプ)のマウスピースを作製される先生も中にはいます。あまり、私自身はソフトタイプマウスピースには反対なのですが、このへんは先生によって意見が分かれるところではあります。

 

1つ気を付けてもらいたいのは、市販で販売されているマウスピースを絶対使用しないことです。市販のものは一見手軽に型取りが自分でできて、自分の歯並びにあった装置ができそうな気がします。しかし、やはり歯科医師・衛生士が型取りして技工士さんが製作した、装置には大きく劣ります。下手に適合の悪い装置を装着して、思いもよらない負担が歯に加わることも考えられます。そういったクレームや返品騒動もよく耳にします。

 

必ず、専門の歯科医院に相談しましょう。

歯医者さんはそんなに敷居の高い場所ではありません。

 

最後に

「虫歯のリスク」、「歯周病のリスク」とは別に「力のリスク」が存在すると私は考えています。咬合力を無視して治療は絶対あり得ません。こういったところまで配慮しながら治療できる歯科医師がさらに増えることが、日本の歯科レベルの向上につながると思います。

 

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