はにかむブログ

歯医者がみんなの疑問にふんわり答えたり、写真撮ったり、雑記したりのブログ

歯医者になるのは難しい?(前編)

今日もコロナのおかげで自宅待機中です。

ブログがはかどります!今日の疑問はこちらです。

 

「歯医者ってどうやってなるの?」

「歯医者になるのは難しいの?」

「実際、学校ではどんな授業や実習をうけているの?」

 

子供を歯学部に入れようとしている親御さんや、これから歯学部を目指す高校生なども気になるところだと思います。

僕自身、大学で教育現場、学生実習に立ちながら診療もしているので、かなり現在の学校現場に詳しい人間です。

大作になりそうなので、初の二部構成です!

 

一般の人にはなかな想像しがたい歯学部の世界。一緒にのぞいていきましょう!

 

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前編

  1. 歯医者になるための学校
  2. 大学での授業
  3. 大学での実習
  4. 1年生(友達づくり)
  5. 2~3年生(授業と実習の嵐)
  6. 4年生(CBT・OSCE)
  7. 5年生(病院実習)
  8. 6年生(卒業試験)
  9. 歯科医師国家試験(2月初旬

 

後編

  1. 卒業式
  2. 研修期間(1年間)
  3. 歯科医師としてのその後の進路
  4. 部活動・サークル
  5. バイトはできるのか?
  6. 授業料問題
  7. 偏差値問題
  8. 歯科医師国家試験合格率の低下問題
  9. 裏話
  10. 最後に

 

歯医者になるための学校

「先生は、どこの専門学校に通われていたのですか?」と聞かれることがありますが、正確には6年制大学を卒業しないといけません。

でも授業や実習の内容は、朝から夕方までかなり詰込み型なので専門学校と言われても間違いではない気がします。

 

「医歯薬系」という言葉を聞いたことはありませんか?

現在我が国では、医学部・歯学部・薬学部そして獣医学部は現在、6年制の大学卒業が必須となっています。資格職は取得すれば安定した職にもなるため、大学浪人しても目指す方が多いため、予備校でよく「医歯薬系」という言葉が用いられます。

 

2020年現在、国立が11大学、公立が1大学、私立が15大学。

ただし、1つの大学でも別の都道府県に2つの歯学部を擁しているところがありますので正確には、27大学29学部となります。つまり、日本では29ヵ所で歯学教育をしていることになります。


大学での授業

朝から夕方まで基本的には詰込み型です。

一般的な大学のように、昼からフラッと授業にでて必要な単位だけとったらOK 、みたいなイメージでいうとすぐに振り落とされます。つまり留年です。

試験や実習の成績も大事ですが、それ以上に授業と実習の「出席」が非常に重要になってきます。

 

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遅刻癖、さぼり癖のある人は、序盤から躓きます。

僕の勝手なイメージですけど、離れた実家から頑張って通う学生ほど、出席は万全です。むしろ親に下宿させてもらって大学すぐ横に住む学生ほど出席単位で落ちていくイメージがあります。僕の独断と偏見です。


大学での実習

大学の授業・実習ともに大きく分けて二つに分けられます。

基礎系」と「臨床系」です。

基礎系」とは、解剖学、口腔解剖学、生理学、生化学、病理学、細菌学、物理・化学・生物学などの基礎的な授業とそれにもとづく実習内容です。

例えば、解剖学実習であれば、生前に「死後の自分の身体を解剖学発展と今後の学部生教育のために使用してください。」という承諾を得た方の身体「献体」を実際に用いて解剖を行います。

余談ですが、この献体提供に協力してくださる方の意志とその家族の理解には本当に頭が下がります。

 

生理学実習であれば、自分の尿を採取し、タンパク量や抗体検査をする実習があります。最近、プライバシーの問題もあり、最近は中止傾向にあります。

 

生化学実習でも、自分の血液を採取し、血液型を調べる実習が有名だったのですが、自分の両親と血液型が合わない ⇨ 家庭内問題が噴出 ⇨ 離婚訴訟へ進展という事態がおこったため、現在はどこの大学も自粛傾向です。

笑い話ではなく、本当です。

僕の友達も血液型自習の時、隣の席で「あれ?」とか言うてたので、この実習は結構怖いです。笑

 

臨床系」とは、保存学、歯周病学、歯内治療学、口腔外科学、補綴学、インプラント学、放射線学、小児歯科学など臨床内容となります。この内容をもとに5年生以降の病院実習では、歯科医師である教員が指導の下、実際に学生自身が患者さんに施術することになります。

 

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顎模型です。上下に歯が並んでおり、歯茎から歯を抜いて取り替えることもできます。

 

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こういった、模型を使用して実習を進めていきます。

 

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実際には、チェアーにこのように固定・設置して、本当に患者が横になっていると想定して実習します。ファントム模型と呼びます。模型なので、動いたり・痛がることはありませんが、それでも学生からしたら、この横になった状態の歯を教科書通り、削ったり修復したりするのは、非常に難しいのです。

 


1年生(友達づくり)

友達づくりはさすがに言いすぎです。笑

しかし、誰と一緒に行動するか、どんな部活に入るか、どんな先輩から情報をもらうか(試験対策も含めて)が今後の学生生活に大きく影響します。

ここでつまづくと、周りから遅れていくこと必須です。

なので、サブ見出しは(友達づくり)にしています。6年間を一緒に乗り越えていく仲間となるので本当に大事です。ほとんどの場合、一生ものの友人になります。

授業内容は、1年から、まず数学、物理、化学、生物学などの理系科目を一気におさらい。さらに、基礎系の授業のオンパレードとなります。出席も厳しいので、出席単位だけで、留年する学生も多いです!

 

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もう一つ気をつけたいのが、医学部受験をあきらめきれずに隠れ浪人している学生です!

毎年、1クラスに数人はいます。「学生自身が医学部をまだあきらめきれないパターン」と、「医者である親に強制されているパターン」があります。

僕の意見ですが、中途半端でどちらにおいても失敗する人をたくさん見ています。

浪人するなら予備校で集中。歯学部に入学するなら、歯学部に専念しないと結局、周りともなじめず留年して、無駄な授業料が出ることが多いです。

厳しめですけども鋭い意見を述べてると思いますがどうでしょうか?


2~3年生(授業と実習の嵐)

1年で生命科学と歯科学についてのある程度の基礎を叩き込んだら、いよいよそれに基づく実習です。さらに歯を削ったり、修復したり、詰め物や入れ歯などの作り方を模型やマネキンを使いながら実際に行います。

技巧作業は、実際は技工士さんの担当ですが当然、歯科医自身がある程度理解できてないと話になりません。なので、金属の鋳造作業や入れ歯を作製する重合作業など、技巧実習も増えてきます。

僕は、この実習を楽しいと思えるタイプでしたが、苦手な人はとことん嫌いでしょうね 笑

「こんなの技工士の仕事なのになぜやらなきゃダメなの?」とか思ってしまう学生は苦痛だと思います。


4年生(CBT・OSCE)

さて、歯科大学では5年生から附属病院や提携病院の歯科にて実際に患者さんに対する治療や見学をおこなう臨床実習が義務化されています。

それに先立って、臨床の場に出てくるにふさわしい知識と技術が備わっているのかをある程度判断する、パソコン試験(CBT)【2月頃】と模擬患者に対する臨床試験(OSCE:オスキー)【3月頃】を突破しいといけません。

4年生もこれまで同様の、試験と実習の嵐ですが、それに加えて、この(CBT・OSCE)突破のための勉強が追加されます。このあたりから、学生が少しピリピリしてきますね。笑

 

CBT

computer based testingの略。臨床実習に求められる「知識」についてコンピュータを用い、いくつかの選択肢のうちから正解肢を選ぶ多肢選択式問題等で構成された試験です。主に4択問題の選択をパソコン上で選択する。教員が下駄をはかせたり、なさけをかけることもできず、1点でも低ければバッサリ切られます。

 

OSCE

objective structured clinical examminationの略。オスキーと呼ばれます。基本的な臨床能力の習得度を評価する試験であり、従来のペーパーテストや口頭試問では評価しにくい「技能」や「態度・習慣」を評価対象としたもの。

 


5年生(病院実習)

CBT、OSCEを合格した学生のみ5年へ進級、病院での実習が開始できます。

(大学によっては、5年になってからCBT、OSCEを行うところもあるそうです。)

 

次はいよいよ、患者さんとのコミュニケーション、問診やレントゲン撮影、診療補助を行います。可能であれば簡単な虫歯の治療、入れ歯の作製、歯石とりなども行います。どこまで、学生にどこまでさせるかは指導教員の判断ですので、大学によって異なります。

学生それぞれの理解度や技術力も推し量りながら進めていかなければなりません。

 

それに加えて、歯科麻酔科、放射線科、内科など他科への見学・実習もあるため、5年生からは一転、毎日病院で臨床実習の繰り返しとなります。昼食後、昼寝してる暇もありません。

 

ときには患者さんから学生へのクレームもあるので、この業務に携わる担当教員にも頭が下がるばかりです。そんな苦悩を当の学生は知る由もありませんが....笑


6年生(卒業試験)

5年生の病院実習と進級のための試験に合格したらいよいよ、最終学年です。

つまり歯科医師国家試験に向けて一直線です。

(6年生の半ばまで病院実習がつづく大学もあります。)

授業も大部分が国家試験対策のような内容です。大学によっては、卒業論文の作製、厳しめの卒業試験を用意して、国家試験を受けさせるか否かの判断材料にします。ここで卒業できず繰り返し留年する人も多いです。

 

「なんで6年生全員に国家試験を受けさせないのか?」という質問がよくありますが、それは大学の国家試験合格率やその後の新入生入学にも関わる話なので、また最後に説明します。

 

ひたすら机に向かって勉強です。僕も国試用のノートが何冊もできました。まともにノートを作りだしたのは、6年になってからでしたが、功を奏して右肩上がりに成績が伸びたのを覚えています。各予備校も全国の6年生向けに模擬試験を行ってくれますので、ある程度の自分の成績と順位が分かります。

 

一緒に試験を乗り越えようとともに勉強する友人グループだと勉強も苦痛ではありません。だから、1年での友達作りが重要になってきます。

さらに、クラスや学年の仲が良いと、全体的に合格率が上がります。

勉強の苦手な学生が比較的多い私立大学では特に顕著だと思います。

成績の良い悪いで仲が悪くなる友人関係だってあります。

勉強を教えあう新しい友達関係や、カップルができることも多いです。

いわゆる国試カップルですね。国試が終わるとすぐに破局しがちです。笑

 


歯科医師国家試験(2月初旬)

 

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勉強、勉強、模擬試験、勉強でいよいよ歯科医師国家試験に挑戦です。

通常1月頃までには、卒業試験や卒業論文などで卒業はすでに決まっている状態が多いです。そこで留年が決まっている学生は国家試験を受験させてもらえません。

 

毎年、医師国家試験と同じ、2月の最初の土日に行われます。

司法試験などとは違い、年齢や受験回数の制限は設けられていませんが、ストレートでできれば合格したいです。というか絶対合格したいです!

なにより、両親は心からそう願っていると思います。

だって、これ以上の大学授業料や予備校授業料を誰が払うのか。って感じですからね。

 

基礎から臨床の筆記試験のみです。現在、全365問、ほとんどが5択の選択問題です。「必修問題」という部分では、80%の正解率がないと即不合格です。この緊張感が学生をより緊張させます。

 

今後、筆記のみでは足りないのではないかということで、国家試験にもOSCEのような臨床実地試験が導入されるのではないか?という話が上がっています。

臨床実習試験を担当していつも思うのは、公平・公正な評価がなかなか難しいという点です。知っている学生が受験していれば、加点してあげたくもなります。

極端な話、かわいい女の子にはいい点数上げよう♡なんて変態教員だっているわけです。

また、歯の削り方一つにしても、歯科医ごとに好みもあります。機械が判断するならまだしも、この試験のためだけに、そんな採点機械を導入できる予算あるのかという話にもなります。

 

今後、文部省はどうしていく方向性なのか見守っていきたいところです。

 

これを突破すればいよいよ卒業式、そして研修生へとなります。

続きは後編で!

 

 

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