「ヒトの歯は1度だけ生え変わる」というのは、みなさんご存じですよね?
歯ブラシや歯医者への通院をさぼってしまい、歯を抜かざるを得なくなってから、よく患者さんがつぶやくセリフがあります。
「私もサメのように何度も歯が生えたらよかったのに~泣」
歯科医なら、だれもが聞いたことのあるセリフだと思います。
「何いうてんねん!!」っと突っ込むわけにもいかず、「まあねー」としか返事ができない微妙な空気が流れるこの場面ですが....
ここで僕はいつも思うわけです。
「ホントにサメと同じ歯があなたの口にあったら大変ですよ~」って。
といいうわけで、今日は一緒に、ヒトとサメの歯、その他の動物も簡単にお口を覗いていきましょう。
- ヒトの歯
- サメの歯
- どちらの歯がいい?
- ネズミの歯
- 最後に
ヒトの歯
乳歯から永久歯へ、個人差はありますが6歳ごろから13歳ごろまで順番に入れ替わっていきます。
「一度だけ」生え変わりの時期があります。
つまり、乳歯と永久歯という2段階あるわけです。
したがって、ヒトの歯の生え方は「二生歯性」(ニセイシセイ)と呼ばれます。
画像は、大人の奥歯(大臼歯)です。歯の根っこ(歯根)が二股に分かれてますよね。
前歯は、歯根が1本ですが、奥の歯になるほど歯根の数も増えてきてガッチリ顎の骨の中に埋まっています。この歯と骨の結合の仕方を釘植(テイショク)といいます。
だから奥歯で何十キロという荷重をかけて、食べ物をかみ砕くことができるわけです。
この奥歯を一本失うだけでも、一気に咀嚼の効率が落ちてしまいます。
永久歯は最後の砦。愛おしいですよね。
サメの歯
では、サメは何回生え変わるか知っていますか?
答えは、「何度でも」です。
生涯、新しい歯が生えてきます。
歯が、割れたり、抜け落ちたらすぐに次の歯が並びます。
したがって、サメの歯の生え方は「多生歯性」(タセイシセイ)と呼ばれます。
爬虫類の多くもこれに相当します。
映画『JAWS』で誰もがご存じのこの光景。
ずらっと先の尖った歯が並んでますよね。
モグモグ噛んで食べるというよりは、「一度噛んだら離さない」をモットーに並べてみました!って感じですよね。実際に、歯の向きは、やや内向きに傾いており、一度食らいついたら獲物が逃げようと思っても引っかかるようになっています。
1本だけ拡大するとこんな感じ。
これでもかっていうくらいのノコギリ感。進化と適応ってすごいですよね。
ここで注目すべきなのは歯の根っこです!
わかりますか?歯根がほとんどないですよね。
じつはサメの歯は、ヒトのように顎の骨にガッチリ埋まっているわけではないのです。
おおよそ2週間もあれば、1列すべての歯が生え変わり、寿命にも寄るが生涯で2万~6万本の歯が生えるともいわれている。
衝撃!!
しかし、実はこのサメの歯。結構もろいのである。
形状も薄くすぐに割れる、欠ける、抜ける。
そうすると、すぐ後ろに待機していた次の歯が前に出てくるというイメージ。
エスカレーターを想像すると分かりやすいかもしれない。
虫歯や歯周病なんて感染するヒマもないこの入れ替えの速さ!笑
激しく獲物を捕食するサメにとって、1本の歯を大事に使うというのは無理があるのでしょう。咬合力も何百キロとあるでしょうから、割れること前提で歯が適応したと考えられます。
さらにヒトの歯の発生は、骨に近いものですが
サメの歯はどちらかというと皮膚(上皮)に近い発生由来のため、ここまで早い交換ができると考えられます。
余談ですが、サメの歯は安いものなら500円くらいで通販で買えます。アクセサリーも多いです。まあこんなに、抜けてくれるならそんなに希少価値は高くなさそうです。笑
どちらの歯がいい?
この質問は答えに困りますけど、虫歯や歯周病に悩まなくてもいいのは、嬉しいですよね。特に歯周病は、世界で最も罹患率の高い感染症ともいわれています。
でも食事中にポロポロはが欠けたり、抜けたりするのは気になります。
こんな尖った歯で笑われたら子供がみんな泣きます。
なにより、自分の口の中がズタズタになりそうです。
口内炎がとまらない!笑
やっぱり、1本の歯を大切にする今のスタイルが社会性のある人間には向いてそうです。
ネズミの歯
おまけです。
ネズミは、あの長い前歯が特徴的ですが、あの歯は「何生歯性」でしょうか?
答えは、「一生歯性」です。
つまり、生まれてから1本の歯がずっと伸び続けるのです。
ネズミやリスなどのいわゆる齧歯類(ゲッシルイ)とよばれる動物はこの歯をもちます。
伸びすぎて困るから、時々固いものをカジッて歯の長さを調整します。
好きでヒト様の家のコードや家具をカジッてるわけではないのです。笑
最後に
いかがでしたか?
人間は、これまでの進化の中で1回だけ歯が生え変わるスタイル(二生歯性)を選択した。つまり、私たちの歯は一生ものだからこそ、「サメがうらやましー」なんて寝ぼけたこと言ってないで、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスを敢行していきたいものです。
今日のまとめは厳しめ!笑