はにかむブログ

歯医者がみんなの疑問にふんわり答えたり、写真撮ったり、雑記したりのブログ

歯医者になるのは難しい?(後編)

さて後編になります。
 
歯医者の世界はむしろ、歯科医師国家試験が終わってからが本番です!
 

f:id:honey-dental:20200329122837p:plain

  1. 卒業式
  2. 研修期間(1年間)
  3. 歯科医師としてのその後の進路
  4. 部活動・サークル
  5. バイトはできるのか?
  6. 授業料格差問題
  7. 偏差値格差問題
  8. 歯科医師国家試験合格率の低下問題
  9. 裏話
  10. 最後に

 

卒業式

国家試験の合格発表が出る前に、卒業式を終えるところも多いです。

4月から歯科医師として研修を行うための準備が忙しいからです。特に、4月からどこで臨床研修を行うかを考えないといけません。

 

歯科大の卒業式は華やかです。特に最近は女性にも人気の職業ですので、女子大生も多いです。特に私立大学は、裕福なおうちの子も比較的多めなので、派手になりがちです。最近はそうでもないようですが....笑

 

研修期間(1年間)

医学部の研修は2年間ですが、歯学部は1年間です。

国家試験の発表を待たずして、研修先を決めに行かないといけません。

どんな歯医者でも研修先として選べるわけではありません。

希望の医院や病院があるならばあらかじめ見学して挨拶に行かないといけません。

 

大部分の学生は、自分が卒業した歯科大学附属病院での研修が一番多いでしょうか。
他の歯科大学附属病院でももちろん研修できます。このタイミングで地元の近くに帰る研修医も多いです。

医科大学や大きな病院の口腔外科に研修先を選ぶ研修医もいます。
また、地域密着のクリニック(診療所)が研修先として選べる場合もあります。

多めに給与がもらえる病院もありますが、給与で研修先を選ぶと後悔しがちです。

事前の見学や先輩の意見を聞いて、しっかり教えてもらえそうか判断しましょう!


逆に指導医としても、合格したばかりの歯科医にいきなり治療をさせるのは怖いです。まずは見学、少しずつ患者とのコミュニケーションや処置に慣れていってもらいます。どこまでさせるかは、その医院の指導医の判断と責任です。

その研修医の知識や力量、やる気にも寄ります。
はじめはみんなポンコツです。
変に調子に乗っている研修医はここで鼻をへし折っておくのも一つ大事なのかなと思います。笑
謙虚で素直な姿勢の研修医は早めに成長していきます。

知識も技術も人間的にも!

 

歯科医師としてのその後の進路

f:id:honey-dental:20200321141155j:plain

1年間の研修を終えた後、いくつか進路があります。

2年目にいきなり開業はさすがに難しいでしょう。

したがって、しばらく修行(勤務)する歯科医院や病院を探すことになります。

 

実家が歯科医院の場合は、親元に帰る人もいますが、親から教えてもらうのってなかなか親子仲が良くても難しいです。時代が違えば、考え方も違います。親子間での医院継承はホントによく揉めます。ケンカしてる歯科医師もたくさん知ってます。

普通は、理想の医院でしばらく勤務、勉強会にいって勉強しながら貯金して、開業への準備をします。現在は30歳代での開業が多いでしょうか。

 

研修終了後、大学にもどり研究をする人も中にはいます。いわゆる学位(博士課程)です。大学院生となり、ライターを決めて研究するという進路です。多くの歯科大学が4年制で博士号取得となり、役職が空いていれば、大学での教員となることもできます。つまり、今後の大学教育、指導の立場にまわるのです。

 

さらにいまは、歯科医師があふれています。よってなんらかの差別化、専門性が必要となります。大学に残るのはそういう意味でもありかもしれません。博士号をもっている歯科医師は決して多くはありません。また、認定医や専門医などを取得し、専門性を広告することで患者さんを集めることもできます。「歯科矯正専門医」「インプラント専門医」「歯周病専門医」などは、本気で悩んでいる患者には心強い肩書きです。

 

「あまり歯科治療が苦手だから」、「もうしばらく学生でいたいから」という消極的な理由で、大学に残る大学院生もいます。真面目にやってる人間からしたらちょっとめんどくさいです。でもこういうタイプの人って、どこの大学でもいるから何とも言えない。だから、大学教員はよく開業している先生に馬鹿にされたりします。

くれぐれもダラダラするために大学に長居するのはやめましょう。

博士号、認定医、専門医などある程度手に入れたらはやく抜けましょう!

本当に「学生教育をしたい!」「研究をしたい!」「教授を目指したい!」そういう意志のある次代のドクターに席をあけてあげましょう。

でもなかなかそんなにうまくはいかないんですけどね。笑

 

部活動・サークル

さあ、学生時代に話は戻ります。

どんな歯科大学でも部活があります。

「THE・体育会系」です。「歯学体」という歯科大学のみの大会、通称「デンタル」があります。サッカー、野球、バスケ、バレーボール、バドミントンからアーチェリーやアイスホッケーなどもあります。

総合大学の中に歯学部がある場合は、サークル活動しているところもあるでしょうが、基本的には部活動が多いです。上下のつながりが面倒くさい、バイトしたい、そんな現代っ子には不人気ですが、いいことも多いです。

 

まずは、先輩や後輩とつながれるという点です。

これは普通に学生生活をしているだけでは、なかなか難しいです。

特に先輩の存在はありがたいです、試験対策や資料をもらえたりします。時には、ご飯をおごってもらえます。部活だけの存在にしないことです。

そして同じことを後輩に還元してあげましょう。自分がされて嬉しかったことは、後輩も喜びます。大学は、歯医者になるためだけの場所ではありません。人間関係をつくるところです。歯科医の世界はめちゃくちゃ狭いです。ここで、仲のいい先輩後輩をたくさん作っておけば、卒業してからのメリットが非常に多いです。

僕の意見ですが、一つくらい部活は入っておきましょう!

 

バイトはできるのか

もちろんできます。ただし、平日は朝から夕方まで授業や実習が詰め込まれますので、できても17時以降と土日祝日になります。

学生の本分は勉強です。

これを忘れてバイトしすぎて、留年する人多数です!

要注意!!

 

授業料格差問題

国公立と私立では、学費が大きく異なります。

国公立大学歯学部では、初年度納入金80万円+6年間学費350万円です。

これでも高く感じますが、私立大学は比になりません。

私立大学歯学部では、初年度納入金300~1000万円+6年間学費2000~3000万円です。

もう、見てるだけで吐きそうです。

授業料が国立の10倍差となることもザラです。

私立大学は、毎年外車が買えると揶揄されるのもうなずけます。

この授業料格差問題は、医歯薬系の大学ならどこでもある話ではありますが、

なにより泣きそうなのは保護者です。くれぐれも留年だけは避けてあげてください。

 

偏差値格差問題

ここまで授業料に差がつくと、入学時の偏差値に大きな差がでます。

そのため、国公立は偏差値が上がります。

国公立は、62~55です。

それに対して私立大学は、55~32まで幅広いです。

偏差値32....言い方は悪いですが、お金があればほぼ入れるような状態です。

しかしこういう大学も必要なのです。

地方に1件しかないような歯科診療所。その後継ぎが勉強できないからと閉院してしまうようでは、医療の継続危機というあらたな問題が出てきます。

そういう救済という意味合いも兼ねていたりします。ただ残念ながら、このような入学時に努力できない学生は、大学在学中や国家試験前の勉強でもやっぱり引っかかるため、結局歯科医になれなかったりします。難しいところです....

 

歯科医師国家試験合格率の低下問題

さらに、現在歯科医師過剰傾向のため、厚労省は歯科医師国家試験の合格率を減少傾向にしています。ひと昔前は、90%以上の合格率でしたが、現在は60~65%ほどです。最終的には50%くらいまで下げるとも言われています。国が合格率にここまで干渉するのはどうかとも思いますが、今の制度上仕方ないです。

それゆえ、まず偏差値の低い大学(主に私立大学)ほど合格率が低くなっていきます。

大部分の私立大学では、1年から国家試験合格までストレートにあがれる学生は50%を切っていると言われています。二人に一人は、留年や国試浪人するということです。悲惨です。

近年、偏差値高めの国立大学でも不合格者が出ることが少なくないです。

「ちょっと歯に詳しいおじさん・おばさん」で終わる可能性も多々あります。

したがって、現在歯科大学は、本来、臨床をしっかり教育すべきなのに、国家試験対策ばかりに時間を費やすようになっている、いわゆる予備校化しているところもあります。これでは、本末転倒なのですが大学の気持ちもわかります。

結局、歯科医師国家試験の合格率低下は、医療の質の低下につながるのではないか、と疑問の声が上がっています。

 

裏話

もう一つそれにまつわる裏話です。

特に私立歯科大学で最近、行われているのが「裏卒業」というものです。

どの大学も合格率をあげることに必死です。合格率が高いほど、学生も保護者もその大学に行きたい・行かせたいと思うからです。

しかし、留年させすぎると保護者がおこります。

国からも学生定員を過剰にオーバーしていると、健全な大学教育ができていないと注意してきます。

しかし、勉強できない学生に対しても、全員に国家試験を受験させると当然合格率が落ちてしまいます。

苦肉の策として、編み出されたのが、「裏卒業」です。

つまり大学は卒業させる、しかし国家試験は受験させない、というものです。

正確には、国家試験の受験出願はさせるのですが、実際受験はさせず、国家試験が終わってからこっそりとしめやかに大学を卒業させるというものです。

ちょっとかわいそうですが、大学的にはやむを得ません。

その証拠に、歯科医師国家試験の「受験志願者数」と「実際の受験者数」があまりにも、乖離しています。

 

そして、国家試験浪人が増加してきています。

そうすると、需要が出てくる歯科医師国家試験専門の予備校がいくつか登場してきています。

 

大学にとっては「不都合な真実」のため、「裏卒業」の場では、卒業証書こそ渡すものの、晴れ着禁止、写真禁止、SNSアップNG、打ち上げ禁止などのところもあるみたいです。

 

それでも6年間以上頑張ってきた学生です。

表でも裏でも、毎年心から卒業を祝ってあげています!

 

最後に

前編・後編と長くなりました。

今回はかなり独断と偏見も織り交ぜながら、これから歯学部を目指す学生、その保護者にも現実を見てほしいと、なるべ平易に書いてみました。おおむね間違ってはいないと思いますので参考になれば幸いです。

 

「歯医者になるのは難しい?」の質問の答えは、「そんなに簡単ではないよ。」くらいにしておきましょうか。笑

でも乗り越えた先は、結構楽しいですよ。夜勤もないですし。

子供にはどうしても嫌われがちですが....

 

僕はこの仕事に向いていると思って楽しくやっています。

しんどいこともありますが、やりがいもあります。

入学するなら、6年間やりきる覚悟をもって臨んでください!!

(学費を払う両親のためにも  笑)

 

 

www.honey-come.info

 

 

www.honey-come.info