医療業界では、患者の紹介状、診療情報提供書、他科への対診など、今も手紙を書くことが多いです。大部分の医師は手紙を、パソコンで作製します。
しかし年配の先生ではまだまだ、自筆の丁寧な手紙を書いて郵送される方も多いです。
丁寧な書き方の中にも、しっかり必要な患者情報が入っているよう、気をつけないといけません。
しかもそれを、毎日何十人と診療する中で書かなければいけません。
診療の合間に、頭を切り替えて詳細な文章を考えます。
私も初めは苦手でしたが、慣れると定型文が頭の中にパパっと出てくるようになります。
今では、研修医や若手の医師にそういった手紙の書き方も指導しますが、まあ現代人の日本語の下手なこと....
そもそも大学で紹介状や情報提供書などの書き方をもう少し教えるべきだと思うのですが....
今日は、そんな医療業界のお手紙あるあるとちょっと変わった日本語についてです。
- 病院は御社?弊社?
- 宛先は〇〇様?
- お客様?患者様?
病院は御社?弊社?
まずは会社の場合です。自分の会社なら「弊社」・「当社」と呼ぶでしょう。
相手方の会社であれば、「御社」・「貴社」などと言いますよね。
では、病院の場合はどうでしょうか?
自分の病院なら「当院」、相手の病院なら「貴院」と呼ぶことが多いです。
時に、「貴病院」・「御病院」と言われることもあります。
クリニック宛ての場合、たまに「御クリニック」「貴クリニック」と宛名に書かれているときは、なんかソワソワします。
最近の歯科医院は、〇〇デンタルクリニックと名乗っているところも多いから、医院名合わせてくれているんでしょうけど、なんかね~笑
間違ってはいないのでしょうが、いつも違和感を感じます。
宛先は〇〇様?
こないだ、研修医がはじめて他院から紹介状をもらったらしくて、私のほうに駆け寄ってこんなことを聞いてきました。
「〇〇先生サムライってなんですか??」
なんのことか意味が分からず封筒を見ると「〇〇先生 御侍史」
と宛名が書いてありました。
確かにドクターみんなが、はじめ読み方が分からない難読漢字です。
おっさんになっても読めない医師も時々いますが。
宛名のところには、「〇〇先生 御侍史(オンジシ)」「〇〇先生 御机下(ゴキカ)」と書くことが多いです。御侍史とは付き添いの人、つまり秘書のことです。でも現代の医師に秘書が付いているなんてまずありえませんので、この表現も昔の名残です。
御机下も、「先生の机の上に置くほどのものでもありません、お時間のある時にチラッと見てもらえたら幸いです~みたいな雰囲気の言い回しです。」
尊敬の念を込めて今も使いまわしている、習慣化しているだけのものですが、いまも毎日のように使用されています。若手医師のほとんどは、こんなのなくなればいいのにと感じていること間違いなしです。
昔の医師は、本当に偉そうな人も多かったのでしょう....たぶん。
なんとなく丁寧そうだからと、普段の手紙やメールに使用しないでくださいね。
医療業界だけの悪しき習慣です。笑
お客様?患者様?
サービス業、接客業としての「お客様」という呼び方はまだ理解できます。
でも、「患者様」は絶対に違うと個人的には思います。
医師と患者の関係性をどうとらえるかの問題です。
患者に気を使って、サービスを提供するのではありません。
どちらかというと、一緒に治療していきましょうという関係性があるべき姿だと思います。よって私は、「患者さん」と普段から使用しています。
ついでに「医療サービス」という言葉もいまだに違和感があるのは私だけでしょうか?
なんとなく、商売感が見え隠れしてて苦手です。
この辺りは、病院や医師側の考え方にも寄りますが....
最後に
毎日、研修医や学生の診療指導だけでも手一杯のなかで、手紙の書き方まで教えるのは相当面倒です。
「みんな本当に日本で育ってきたのか?」と疑うばかりです。
挙句の果てにワープロ打ちが遅すぎて、ついには「スマホのアプリで紹介状作れないかな?」と言い出す始末....これが現実です。笑
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