現在、日本の歯科界は困惑しています。
日本のほぼ全ての歯科医院で使用されている、ある材料が高騰しているからです。
その材料とは、金パラ!!
純金でも、シルバーでも、チタンでもなく、「金銀パラジウム合金」です!
あまり、聞きなじみないかとは思います。
しかし歯科医院では、最もよく使用する金属の一つです。
皆さんも、口の中に金属の詰め物や被せ物を保険診療で入れてもらってる可能性が高いです。
実はそれ、ほぼ全てこの「金パラ」です。
一般的には、銀歯と呼ばれていますが、ただの銀ではすぐに変形してしまいます。
歯科用の特殊な合金なのです。
今日は、この金パラについて、考察、愚痴、悲鳴をあげていきます。 笑
- 金パラとは?
- パラジウムの需要と供給
- パラジウムの商品市場
- 価格高騰の裏側
- 価格高騰はいつ終わる?
- 最後に
金パラとは?
金パラ(12%金銀パラジウム合金)とは、歯の詰め物(インレー)や、かぶせ物(クラウン)によく使われる保険適用の歯科金属の一つで、歯科関係の人間はみんな「金パラ」と呼んでいます。
正式には「歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金」です。
金パラ製品の組成は、金が12%、パラジウムが20%、とJIS規格で定められており、
さらに銀の含有率は約50%、銅が約20%、その他インジウムなど数%が含まれています。
このパラジウムの価格がここ数年、急騰しているのです。
【palladium】パラジウムとは白金族元素の一つで、単体は銀白色の金属です。原子番号46の元素。元素記号はPdとなります。1803年にイギリスの化学者のウイリアム・ウォラストンによって発見され、名前の由来は前年に発見された惑星パラス (pallas)にちなんで名づけられました。
近年では歯科金属材料や歯科用貴金属製品の他、自動車部品(主に触媒)などの工業の分野でも使用されています。
世界供給量がロシアと南アフリカ共和国の占める割合が85%以上もあり、経済情勢や政治情勢の変化で価格や相場が揺れやすいのがパラジウムの特徴です。
パラジウムの需要と供給
一方、パラジウムを必要とする国としては、日本と北米が60%以上と高く、パラジウムの相場・価格の安定は経済において重要な課題となっています。
パラジウムの需給は、主要生産国であるロシア・南アフリカからの供給(売却)が毎年大きく変わるため、その産出量が最大の変動要因となります。需要面では総需要の約5割が先進国での自動車触媒と電子・電気部門に集中しているため、日米欧の景気動向が重要視されている。
パラジウムの商品市場
「パラジウム」の現物取引は、チューリッヒ(スイス)を基点に行なわれているロコ・チューリッヒ取引と呼ばれる大口の現物取引が主流です。
先物取引としては、NYマーカンタイル取引所(NYMEX)に「パラジウム」先物が上場している。
日本では東京商品取引所に「東京パラジウム」が上場しています。
価格高騰の裏側
価格の推移
2019年の1月にはグラムあたり5,000円程度だったパラジウムですが、2月以降に徐々に小売価格が高騰を続け、一時期は6,000円台になりました。その後3月に入って少し下落したものの、2019年の後半は5,300円~5,900円で推移を続けています。世の中の一般の人はあまり馴染みのない金属が密かに高騰し、すでにプラチナや金よりも高いという異常な状況が続いているのです。
なぜこれほどまでにパラジウムの価格が高騰しているのでしょうか?
排ガス規制
ひとつ目の理由としては、世界的な排ガス規制によって、ディーゼル車の販売台数が減少することでガソリン車の需要が高まっていることが上げられます。東南アジアをはじめとする新興国では自動車普及に伴い深刻な大気汚染が発生しており、この対策が大きな課題となっています。大気汚染には「ガソリンを改質ガソリンにする方法」、「自動車のマフラーに有害物質を除去するパラジウムを触媒として設置する方法などが有用な対策であることが証明されています。このうち、後者の「パラジウムを設置する方法」が技術的にもコスト的にも有効であるとされている為、パラジウムの需要が伸び価格の高騰に繋がっているようです。
インドネシアのニッケル輸出規制
2020年からインドネシアが鉱山からのニッケル輸出を禁止すると発表しました。パラジウムはニッケルの副産物でもあるため、供給が減るのではないかとの見方がされていて、一部の投機筋が市場から吸収して需給を引き締めているとも考えられています。
価格高騰はいつ終わる?
鉱物は地球上で採掘される量には限界があり、供給不足であることは今後も変わることな無いので、今後もパラジウムの価格が大幅に下落するとは考えにくいです。
もちろん相場下落の可能性もあります。それは、他国でパラジウムが増産される可能性です。例えば、ロシアのノリリスクには世界有数のニッケル鉱山がありますが、ここでもパラジウムが副産物として産出されていて、世界の供給の約6割を占めています。価格の高騰をうけて、この鉱山でパラジウムの増産が行われるのではないかという噂もあるみたいです。
まだまだ高騰が続きそうなパラジウム。レアメタルの1つであるパラジウムはレアというだけあって、供給量がひっ迫していることには間違いありません。
最後に
まだまだ高騰が続きそうなパラジウム。
被せ物1つ作るのにも、虫歯の大きさによっては、金属代が高すぎて歯科医院が逆に損をするときもあるくらいです。
医院の経営に響いてくるため、全国の歯科医院が頭を悩ませているのが現状です。
ときどき診療報酬改正で、被せ物や詰め物の合着費用が上昇することもあるのですが、全く金パラ高騰に追い付いていません。
よって、これからの歯科界は「脱金属」「メタルフリー」の時代に進んでいくと考えられます。金属アレルギー対策としてもそのほうがいいんですけどね。
金やプラチナ(白金)よりも価格の高いパラジウム....異常ですよね。
今後も価格の動向を見守っていきたいと思います。