虫歯がある程度大きくなると、削った部分は、詰め物(ツメモノ)や被せ物(カブセモノ)で本来の歯の形態を取り戻します。
なぜなら、「虫歯で溶けた部分は、再び時間をかけて再生」とはいかないからです。
皮膚や粘膜の傷、骨折もある程度の治癒が期待できます。
しかし歯質は人体で最も硬い部分であり、再生はできません。
よって人工物で置換する必要が出てきます。
これが補綴(ホテツ)処置と呼ばれるものであり、歯科を独特の診療科とする所以でもあります。
我々歯科医師は、毎日患者さんに「どんな詰め物・被せ物をいれますか?」「銀歯?プラスチック?セラミック?CAD冠?どうしますか?」といろいろ提案します。
では逆に、歯医者さん自身が虫歯になった場合どれを選ぶのでしょうか?
私は同僚や友人も含めて、歯科医の治療を何度も行っています。
そんな私の独断・偏見もまじえて裏話していきましょう。笑
- 補綴処置の種類
- 保険治療と自費治療
- おおよその価格設定
- 歯科医自身がよく選ぶ補綴物
- 最後に
補綴処置の種類
簡単に専門用語の解説です。
詰め物(ツメモノ)・・・・インレー(形態によっては、オンレー・アンレーとも呼ぶ)
被せ物(カブセモノ)・・・・クラウン(つまり、王様が頭にかぶる冠のイメージ)
歯を大きく削る必要があった時ほどクラウン(被せ物)が必要になり、これが金属だと見た目に大きく影響します。
芸能人でも銀歯を普通に入れている方が時々いますが、笑った時のイメージがすこし暗くなってしまいますよね。黒く光ってみえる被せ物が、目立ってしまいます。
口を開けたときに歯のどこまで外から見えるか。というのは一つ大きな判断基準になります。特に上の奥歯であれば、金属でもそこまで他人から見えることはありませんが、逆に下の歯であれば、一番の奥の歯でも口の大きさによっては目立ちます。
口の大きさ、歯並び、歯列弓のアーチのサイズ、笑った時の口角の上がり具合などでも大きく変わります。
保険治療と自費治療
重要なのは材質です。
保険診療では通常、銀歯、強化プラスチック、CAD/CAM冠(機械削り出しの白い被せ物)などの種類が選べます。
銀歯と一言でいっても「金パラ」という金・銀・パラジウム合金でできており、これを保険診療でセットすることができる日本は本当に贅沢だと思います。こんな国は世界広しといえど、日本くらいです。強度や耐久年数も十分でしょう。人によっては10年以上も使用可能です。ただし、見た目がどうしても黒っぽく、いかにも銀歯という色をしています。
それに対して自費診療が可能であれば、セラミックやジルコニアの補綴処置が可能です。色調・強度ともに十分で、プラークも付着しにくいです。審美性だけでいえば、セラミックがダントツで綺麗で自然にみえます。もちろん前歯の被せ物なら、まずはこれをお勧めします。
また、ゴールドインレー(クラウン)と呼ばれる、18Kや20Kまどの高カラット金合金で作製される補綴もあります。一見、純金のような色合いで口腔内が明るく見えるほか、再度虫歯になりにくいなど、歯科医療スタッフに結構人気です。
おおよその価格設定
保険診療の自己負担額
銀歯のインレー・・・・1500円ほど
銀歯のクラウン・・・・3000円ほど
プラスチックのインレー・・・・2000円ほど
CAD/CAM冠・・・・5000円ほど
他に、虫歯の処置や形成費用など追加されますので費用は前後しますが、医院によって費用がおおきく変わることはありません。それが、日本の保険制度です。
自費診療での価格
セラミックインレー・・・・約3万~7万円
セラミッククラウン・・・・約5万~10万円
ゴールドインレー・・・・約3万~8万円
ゴールドクラウン・・・・約5万~10万円
この価格は、私の周囲の医院の価格設定を書いているだけです。
都市部ではさらに高額もあり得ますし、地方ではもう少し相場も低いでしょう。
自費診療の価格は、材料費+技術料+セット料+数年間の保証料などで構成されており、医院によってまちまちです。高いから良い、安いから悪いという訳でもありませんので、担当医と十分相談しましょう。
歯科医自身がよく選ぶ補綴物
では、今日の本題です。
「歯科医師や歯科衛生士さんなど、自分の口が虫歯になった時にどの補綴処置を選ぶのか!?」
やはり、多いのはゴールドインレー・クラウンです。
特に、年配の歯科医療従事者ほどこの傾向が強いです。
ベテランほどいいものを知っている....という感じでしょうか?笑
理由をいくつか列挙するなら、
- 割れにくい。(金含有率が高いほど伸びる性質があるため丈夫)
- 隙間から再度虫歯になりにくい。(腐食しにくく、膨張率も歯に近い)
- 長持ちしやすい(40年以上維持しているゴールドも時々みられます)
- 歯を変色させない。(ゴールドは溶け出す心配がない)
- 吸水性がない。
- つやがあり、舌触りがいい。
- 歯を削る量が少なくて済む。
特に、最後が重要でしょうか。
自分の歯よりもいい材質はこの世にないと歯科関係者であるほど信じています。
できれば、削る量も減らしたいでしょう。
セラミックと比較しても、ゴールドインレーやクラウンであれば、歯質の削除量を最小限にできます。
「金属は割れる心配が少ないため、詰め物のサイズを小さくできる」=「歯の削る量を減らせる」というメリットがあります。
これがいまだに、ゴールドが根強い人気のある理由です。
ちなみに、若いドクターや衛生士さんほど、セラミック(綺麗な白の補綴)のセット率が高いです。
「いくら明るく見えるからとはいえ、白い方がいいに決まってるでしょ!」と感じるのでしょう。
最後に
私なら、虫歯のサイズで検討します。
もともと結構大きな虫歯だったなら、もうセラミックにしてしまうと思います。
もともと小さめの虫歯で、不必要に健全な歯質を削りたくないならゴールドも検討するかもしれません。
もちろん、保険診療も悪いわけではありません。
ただ選択肢の幅が広くとれるのであれば、自費診療も検討していいのではないでしょうか。費用が高い分、メリットも多いです。
担当医と十分相談し、納得できるのであれば検討してみましょう。
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