はにかむブログ

歯医者がみんなの疑問にふんわり答えたり、写真撮ったり、雑記したりのブログ

お箸をくわえて歩かない!

こんにちは はにー(@honey_come0011)です。

 

子供がチュッパチャップスを舐めながら歩いている姿を時々見かけます。

この時みなさんはどう感じますか?

「キャンディくわえて可愛いな」ですか?

「あのキャンディおいしそうだな」ですか?

「ちゃんとゴミを持ち帰るかな?」でしょうか?

人によって感じ方は様々ですが、私なら、真っ先に「危ないな!」と感じてしまいます。できることなら、すぐにキャンディを手に持つように注意します。

 

そして自分の子供なら本気で注意します。

なぜなら、これも前回のテーマ「誤飲と誤嚥」と同様、生活に存在する「生命のリスク」といえるからです。

 

今日のテーマは「お箸をくわえて歩かない!」です。

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  1. お箸をくわえて歩くリスク
  2. 過去の悲惨な事故
  3. 完璧な救急医療は存在しない
  4. 教訓
  5. 最後に

 

お箸をくわえて歩くリスク

そもそも身体を動かしながら物を飲み込むと、その衝撃で嚥下に失敗し、気管の方へ流入してしまう可能性が上がります(誤嚥)。これは、どんな人でも起こりうることです。人間同時に2つのことはうまくできません。嚥下反射は多くの反射が組み合わさってできる非常に複雑な生体反射です。原則、立ち止まって食べましょう!

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さらにほとんどの日本人は、子供のとき両親に「お箸くわえたまま歩かない!」「キャンディ舐めながら走らない!」など一度は注意をされたことがあると思います。

万が一、転倒した時にそのお箸やキャンディの柄、串、歯ブラシなどは喉を突く、口腔内を傷つける可能性があるからです。容易に想像できることではありますが、類似の事故は後を絶ちません。まだ足取りの覚束ない子供では、なおさらそれが言えるでしょう。

お祭りや文化祭の露店など食べ歩きが習慣化してしまう場面で特に注意が必要です。子供もテンションが上がっているので、なおさら注意が散漫になり、走り回る子供もよく目撃します。

 

そんな中で、やはり不運な事故も起こっています。

 

過去の悲惨な事故

20年ほど前に不運な事故が起こり社会問題にもなりました。

いわゆる「割り箸事故」「杏林大病院割り箸問題」と呼ばれる事件です。

 

1997年7月10日(土)、ある男児(4)が母・兄とともに盆踊りに大会に遊びに来ていた。兄弟は綿菓子を食べていたが、母親が目を離した(チケットを手に入れるため離れた)隙に、割り箸を咥えたまま走ったところうつぶせに転倒、その弾みで割り箸が喉に刺さった(午後6時5分頃)。男児は自力で割り箸を引き抜いき、一時的な意識障害の後、すぐに意識を取り戻した。

その後、保健室で看護師が口の中を診察

現場に到着した救急隊が傷口を意識清明を確認

→救急車で搬送された大学医学部附属病院の救急救命センターを受診したが、ここでも意識レベルに問題なしと判断

→耳鼻咽喉科の医師の診察を受けたが、止血もしており硬いものが口蓋に触れることもなかったため、全身状態・意識レベルの問題もないため軽症と判断した。消毒と抗生剤の処方し、帰宅させた

→翌朝7月11日、男児が容体急変したため再度救急要請

→救急隊員到着時には既に心肺停止

→昨日と同大学付属病院に搬送され蘇生処置が施されたものの、死亡が確認された(午前9時2分)

→死亡後、割り箸の残存を疑い頭部CT撮影を行ったが、割り箸の有無はわからず

→異常死としてただちに警察へ届け出

→検死で警察医も口腔内を観察したが異物は認められず

→7月12日司法解剖の末、ようやく喉の奥に深々と刺さるお箸の破片が確認された。

 

不運にも割り箸の先端、約7.6cmが頸静脈孔に嵌入し頭蓋底を超え小脳まで穿通していたのである。

転倒事故発生から死亡確認まで約15時間。

多くの医療従事者に口の中を確認されたがついに司法解剖するまで原因は判明しなかった。当然、誰しもが「お箸の破片が刺さっているのでは?」という最悪の事態を想定して診察・診療しているはずである。なぜここまで発見が遅れてしまったのか。

 

原因として考えられるのは....

  • 折れたお箸の現物を紛失しているということ。
  • 木製の箸のため、CT撮影といえど確認が困難である。
  • ましてや頭蓋骨の中まで入っているとなるとさらに困難である。
  • 過去にも、ここまで深く口腔内から箸や串が刺さるといった事例が存在しない。
様々な不運も重なって最悪の事態になったと考えられます。

その後、刑事・民事訴訟で医師の過失の有無が争われたが、いずれも医師に過失はなく男児の救命は不可能であったとの判決が下りました。

さらに目を離した保護者の責任を問う、過度の非難中傷もあったとのことです。

 

完璧な救急医療は存在しない

この事件を機に、日本の医療体制(特に救急医療体制)が大きく崩壊したともいわれています。

マスコミやそれに煽られた世間が、対応した医療機関を過剰にバッシングしました。大学病院の勤務医は、診療所と比べても比較的、低賃金・過酷な勤務条件であることも多いです。善意に基づいて行った医療行為の結果が思わしくなかったという理由で、刑事責任を問われるという事態が起こり、救急現場から医師が離れるという事態が進んでしまったと言われています。

 

病院としても財政上、24時間あらゆる事態に対応できる病院は存在しません。担当した医師の専門外の患者を対応しなければならないということも多々存在します。

したがって多くの救急病院が医療紛争回避のため、救急医療から撤退したのです。

 

マスメディアの報道が、今日の救急医療体制の危機的状況を作り出したともいわれています。

 

教訓

この悲惨な事件を繰り返さないためにも、医療従事者だけでなく、子供に携わる職業者、何より普段からの保護者の注意喚起が重要になります。

 

最初の話に戻ります。

「子供がチュッパチャップスを舐めながら歩いている姿」

これを目にしたら、今日からすぐに止めましょう。

そして「絶対ダメなことなんだ!」と子供にも認識させましょう。

 

「口にものを咥えて動かない!」

簡単なことだけどついついやってしまう行動なだけに、無くならない事故です。

 

最後に

今回紹介した事故は極端な例です。世界的にみてもここまでの事例はほとんどなく、海外でも大きく報道されました。お箸、串、棒付き飴や歯ブラシなど普段生活で使用するものなだけに、怖がりすぎる必要はありません。ただし、そういった最悪の事例があったことを理解し、教訓として生かしましょう。

 

 

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